​PROFILE

村上 真

1985年千葉県生まれ。

2008年に日本大学理工学部建築学科を卒業。

2011年の夏に徳島県鳴門市に移り住み、(株)moon at.に入社。伊月善彦のもとで建築を学ぶ。

2015年に村上真建築設計事務所を設立。

在学中や社会人になってから、ヨーロッパ諸国、アメリカ、東南アジア諸国など様々な国の建築を訪れる。

現在、鳴門市や徳島市、地元の千葉県を中心に住宅や店舗の設計を行っています。

ATTITUDE

 子供の頃、父が借りていた畑の奥に広がる雑木林で遊ぶのが好きでした。そこは住宅街と隣り合わせの場所でしたが、一歩入ると生い茂る緑や湿気を含んだ土の匂い、木洩れ陽、風で葉がこすれる音、鳥の鳴き声などが溢れていました。

かさかさと落ち葉をけりながらいつも遊んでいるエリアに着くと、

​ちょうど座りやすい高さに曲がった木の幹に腰掛けます。と同時に太陽が雲から顔をだし、木々のすきまから光が差す瞬間を目にしました。生まれてはじめて空間を意識した瞬間だったと記憶しています。

 話は変わりますが、私の実家は某ハウスメーカーが建てたもので、今の職業からすると、どうしてここはこうなった?と思うような建物なのですが、ひとつとても好きなところがありました。

それは階段に西向きの大きなはめ殺しの窓がついていたことです。夕方、両親がまだ仕事をしており家には私一人だけの時間に、ふと自分の部屋(2階)に上がろうとすると、階段にはこれでもかと言わんばかりにオレンジの光が入ってきていました。初めて気付いたのは確か小学校高学年の頃だったと思いますが、馴れ親しんだ実家は琥珀色の光に満ち溢れ、普段とはまったく違う表情をしていて、いつまでも眺めていたい気持ちにさせられました。

 できるだけ違和感がなく目立たないデザインでいて、全体を見渡せば、住む人、使う人のセンスに溢れた空間が好きです。それは子供の頃の2つの体験と似ているのかもしれません。なかなか適した言葉が見つからないのですが「普段の中に潜む特別な瞬間」を設計したいと思っています。

建築の教科書に載っているモダンな建物に住んだこともなければ縁もゆかりもない田舎者にも日常の中に美しさを見つけた子供の頃の体験があって、それが今でも鮮明な記憶となってイメージを構築する手がかりになっています。